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アンカー 1

イェンに始めて会ったのは去年の夏のことで、
休耕田の棚田から棚田へジャンプする様を得意げに見せてくれたのを覚えている。
春にもう一度村を訪れた時、村は濃い霧に覆われていて、田はまだ乾いていた。
出迎えてくれたのは民族衣装に身を包んだ女性、イェンの母親のシューさんだ。
イェンの家族は少数民族の中でも黒モン族と呼ばれる民族で、
その名の通り藍染めの黒い衣装が目印。
家にはインディゴを煮込む大鍋と染め液のタンクがあり、
伝統的な技術を守っている。
イェンにとっての遊び場は棚田のあぜ道や、斜面に広がる畑、村の学校の小さな
グラウンドで、決して遊び場が多いとは言えない。
しかし「アッグッシャ(恐らく”抱っこして”の意)」と抱っこをねだるイェンの姿を
見ると、そんな心配は無用であると感じた。
子供たちが首や耳につけている金属のアクセサリーは、
子供の魂を悪い霊から守るためのものだ。
子供たちは周りの大人や、山々の精霊たちに守られながら今日も健やかに遊ぶ。
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